株式投資をするうえで、重要なツールのひとつである「会社四季報」
多くの投資家が四季報を参考にしており、四季報の内容によって株価が上下するほどの影響力があります。
実際、2015年の四季報夏号で営業増益率ランキング1位になった銘柄が、四季報発売日にストップ高になったこともあります。
しかし四季報は「字が小さくて分厚くて、なんだか難しそう」と、敬遠している人もいるのではないでしょうか。
四季報はポイントを押さえれば、読むのは全く難しくありません。
この記事では、四季報をどのように読めばいいのか、収益性や健全性はどのように判断できるかについて紹介します。銘柄選びの参考にしてくださいね。
四季報には優良銘柄選びに欠かせない情報が満載
四季報は、東洋経済新報社が年4回(3月、6月、9月、12月)発行しています。
上場企業の分析やランキング、株主優待の紹介や、上場投資信託であるETFやREIT(不動産投資信託)の情報が掲載されています。
四季報のメインである上場企業の個別分析ページに、どんな情報が載っているか確認してみましょう。
掲載項目 | 内容 |
---|---|
基本情報 | 社名や特色、事業内容や設立年など |
業績記事・コメント | 東洋経済の記者によるコメント、業績や株価の材料になりそうな情報 |
業績数字 | 営業利益、経常利益、純利益、1株利益、配当など |
株主、役員 | 株主の構成、大株主など |
財務状況 | キャッシュフローやROE、有利子負債など |
資本移動、株価 | 株式分割の履歴など |
株価チャート | 長期投資の参考になる月足のローソク足、12ヶ月・24ヶ月移動平均線など |
株価指標 | 株価の割安感をはかるPERやPBRなど |
予想営業利益予想 | 前号から上方・下方修正しているかなど |
限られたスペースに情報を盛り込むため、表記の簡略化や独自の記号が使われており初めはわかりにくく感じます。
しか使いこなせれば、銘柄比較に大活躍してくれますよ。
会社四季報が無料で閲覧できる証券会社一覧
四季報は本来有料の出版物ですが、次の証券会社ユーザーは無料にて閲覧できます。
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- SBI証券
- 楽天証券
- マネックス証券
1冊2,000円の本を、無料で閲覧できるお得なサービスです。
会社四季報の内容に興味があり、まだ上記証券会社に口座を持っていない人はすぐ開設してみましょう。
上記4つの証券会社で迷ったとき、どれか1つを選ぶとしたらSMBC日興証券がおすすめ。
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見やすくてボリュームもあり、プロに匹敵するほどの知識を身につけられますよ。
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会社四季報にはオンラインサービスもあり、「四季報オンラインはメリットたくさん!うまく使って株取引を制す」の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
まずは業績を確認!EPS(1株益)・1株あたり配当・経常利益に注目
会社四季報で企業の個別ページを見る場合、初めに業績欄をチェックしましょう。過去実績(5年間)と、予想(四季報予想2年分、会社予想1年分)が掲載されています。
ここで確認できる情報は次のとおりです。
売上高 | ・1年間の売上高(または営業収入、営業収益、経常収益) |
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営業利益 | ・売上高から原価や販売費用を差し引いた額 ・本業での儲け |
経常利益 | ・営業利益に営業外損益(受取利息や支払利子など)を加減した金額 |
純利益 | 経常利益に特別損益(土地建物の売却で得た利益や、災害による損失など)を加減し、税金を差し引いた金額(税引後利益、純益、最終利益) |
EPS | 1株あたり当期純利益(当期純利益÷発行済株式数) |
1株あたり配当 | 1株あたりの現金配当金額 |
これらの情報は会社の総合力を判断できるので、しっかりチェックしておきましょう。
1株あたり配当がEPSより高い企業は資産を取り崩している
業績欄で特に注目すべきなのは、1株あたり当期純利益(EPS)です。1株あたりどれだけ利益が出ているかを示しており、企業の収益性を判断するために使われます。
ただし発行済み株式数が分母なので、株式数が違う他企業と単純に比較はできません。
順調にEPSが大きくなっている企業は、収益性が上がっているため株価が上がりやすくなります。
EPSと合わせて確認したいのは、1株あたりの配当金額(1株配)です。1株あたりの配当が、EPSよりも小さいかどうかチェックしましょう。
資産が減ると、利益を生むための営業活動や設備投資にお金を回せない可能性が出てきます。
配当を多く貰えるのは嬉しいのですが、株価が収益が下がり株価が下落してしまえば本末転倒。EPSの範囲内に収まっていることを、しっかり確認して投資しましょう。
当期純利益が黒字でも、営業利益・経常利益が赤字なら要注意
業績欄では、純利益だけではなくて営業利益や経常利益もチェックしてください。純利益がプラスでも、営業利益や経常利益がマイナス続きの企業には投資しないのが無難です。
営業利益や経常利益が赤字なのに当期純利益が黒字になっている場合、事業全体としては成績が良くない可能性がありますよ。
当期純利益は、会社の総合力を示す経常利益に、めったに発生しない損益(特別損益)を加減した金額です。
特別損益とは、土地や建物の売却益などの臨時収入のこと。つまり業績が悪くても、臨時収入によって純利益が黒字になることはあるということです。
財務状況欄のキャッシュフローと自己資本比率で健全性をチェック
業績欄をチェックしたら、次は財務状況欄も確認しましょう。
特に確認しておきたいのはキャッシュフロー、自己資本比率、ROEです。
キャッシュフローや自己資本比率では、企業の財務の健全性を推測することができます。一方ROEは、企業の収益性をはかる指標です。詳しく見ていきましょう。
営業キャッシュフローのマイナスが続く企業には投資しない
キャッシュフローは企業の財務の健全性を図る上で重要です。キャッシュというのは、現金や、すぐ現金に交換できる預金などのことです。
売上があっても現金が足りなくなると、倒産する可能性があります。
だから純利益だけではなく、キャッシュフローも確認する必要があるぞ。
キャッシュフローの額は会社の規模によって違うため、他の企業と比べてどれくらいあれば安全だとは言い切れません。
しかし有利子負債という金額も見ることで、企業の安全性をはかることができます。
これをキャッシュフロー対有利子負債比率といい、5年以下が望ましく、10年以上だと投資は避けたほうが無難です。
キャッシュフローには営業キャッシュフローの他に、投資キャッシュフローと財務キャッシュフローもあり、こちらはどちらもマイナスであるのが理想的です。
投資キャッシュフローは工場建設などの投資を行っていればマイナスになりますし、財務キャッシュフローのマイナスは銀行への借金を返済していることを意味するからです。
つまり、理想的な会社のキャッシュフロー(CF)は、営業CFが+、投資CFと財務CFが-です。
自己資本比率が40%以上なら、企業は倒産しない
「自己資本比率が高い企業は、財務が安定している」と言われています。自己資本比率は、借金ではない(債権者に返す必要がない)資本の割合のことで、自己資本=返す必要のないお金=株主資本です。
40%以上ならかなり安定しており、「つぶれない会社」とされます。
参考に、電気機器分野の有名企業の自己資本比率を表にしました(2018年3月期)。
企業名 | 自己資本比率 |
---|---|
オムロン | 67.8% |
キヤノン | 55.2% |
日本電産 | 52.7% |
ソニー | 15.6% |
こうしてみるとソニーの自己資本比率が低く、苦境に立たされていることがはっきりとわかります。
海外投資家はここを見ている!収益性をはかるROE
ROEは、企業の収益性を確認するための指標です。
企業の収益性を見るという点ではEPSと同じで、ROEは「純利益÷株主資本」で計算できます。四季報では、実績ROEと予想ROEが掲載されています。
ROEでわかるのは、株主からの投資によって得た自己資本を使って、どれだけ収益をあげられたかです。ROE(株主資本利益率)が高いほど、企業は株主のお金を効率的に使って収益をあげているということ。
利益が分子なので、利益が大きくなるほどROEは上昇します。
最低限必要なROEは5%、標準的には8%、海外の有力企業なら10%が平均的、15%以上が望ましいと言われています。
そのため、新たに8%を超えた株や継続的に8%以上を維持している銘柄には海外投資家からの人気が集まり、株価が上昇する傾向があります。
株主構成欄を見れば、株価の動向の特徴が見えてくる
株主構成も重要なので、見落とさないようにしましょう。
株主構成を知ることで、値動きの特徴を知ることができますよ。
経営者が大株主の企業は株価対策に熱心
経営者が自社の大株主でもある場合、経営者本人が株価や株主の重要性を意識します。
株価をあげる対策に力を入れるため、株価が安定的に上昇する傾向にあります。
ファーストリテイリング(ユニクロ)や、ソフトバンクが良い例です。
もし企業が不安材料を抱えており、今後自社の株価が下がると予想しているなら、損する可能性がある自社株買いはしないはずです。自社株買いは企業の自信のあらわれだと感じ、投資家はその銘柄を買います。
浮動株が少ない銘柄は値動きが激しくなる可能性が高い
株主欄には、株主の種類による比率も掲載されています。
外国 | 外国国籍、外国法人が所有する株式数の割合 |
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投信 | 投資信託に組み入れられている株式数の割合 |
浮動株 | 1~50単元未満の株主が所有する株式数の割合 |
特定株 | 大株主10位までと役員、自己株口の株式数の割合 |
特定株は役員などが保有しており、めったに市場に出回りません。
特定株の比率が高くて浮動株が少ない場合、株式市場での流通量が少ないため流動性※が低くなり、株価の変動が激しくなります。
市場に出回る株数が多くいつでも売買が可能なら「流動性が高い」、出回る株数が少なく売買チャンスが少ないなら「流動性が低い」と表現します。流動性が低く売買チャンスが少ないと、買えるときに買っておく必要があるため、極端に高い価格や低い価格でも取引せざるを得なくなり、株価が大きく変動しがちです。
外国人持ち株比率が株価の行方を左右する
「外国」と「投信」の比率が多い場合、多くの資金を投入している機関投資家が多いということです。特に外国人投資家は日本の株式市場に大きな影響力を持っています。
外国人持ち株比率が上がり始めると株価は上昇していき、外国人投資家が売り始める(外国人持ち株比率が下がる)と株価が一気に下がってしまうのです。
外国人投資家の動向に注目し、外国人持ち株比率が上昇しはじめた銘柄は、今後の値上がりに期待できますよ
枠外までチェックすべし!四季報予想を使いこなそう
四季報の中で特に注目してほしい項目について説明してきましたが、四季報には他にも情報が沢山掲載されています。
割安銘柄を探す指標と長期トレンドを確認できるチャート
ページの上にあるのは株価チャートです。約3年半分の月足チャートと、12月(実線)&24ヶ月移動平均線(点線)、出来高が掲載。
長く2つの移動平均線が並行だったあとに12ヶ月移動平均線が24ヶ月移動平均線を下から抜いた場合には、今後しばらく株価が上昇し続けることが予想されます。
チャートの横には株価の指標も。PBRやPERなど株価の割安感を探る指標で、PERは15倍、PBRは1倍を下回れば割安だというのが一般的な目安です。
割安な株は、長期的には適正だと思われる価格まで値上がりすることが予想されます。
株価に影響を与える見出しと強気マーク
業績記事の部分は、東洋経済の記者が業績面での好調・不調や、株価に影響を与えそうな材料について解説しています。
コメントにはわかりやすい見出し(【絶好調】【V字回復】【減益】など)がつけられており、内容が好意的だと、株価が上昇することがあります。
また、矢印と合わせて、会社予想よりも四季報予想の方が上回れば(強気)ならニコニコマーク、弱気(四季報は営業利益が会社予想ほど出ないと考える)なら目をつぶって情けない表情のガッカリマークがつきます。
会社によっては業績予想を弱気に出すところもあれば、強気に出すところもあるので、そこを四季報の基準で客観的に手直ししてくれているのです。
予想が3~30%ずれていれば強気・弱気、30%以上ずれていれば大幅強気・大幅弱気のマークが付きます。
ランキングにも注目!株価上昇や出来高増に影響大
個別企業の分析より前のページに掲載されているランキングにも注目です。個別企業の分析を全てチェックするのは大変なので、ランキングにあがってくる銘柄から投資先を探す人もいるからです。
例えば、2015年の四季報夏号で営業増益率ランキングトップになったキーウェアソリューションズ<3799>は、四季報発売前日(6/11)の終値は599円(出来高7,100)でしたが、四季報発売日の6/12には出来高が449,300と急増し、ストップ高となりました。
2015年夏号の営業増益率ランキングで5位までに入った企業(予想営業利益5~50億円の部)の6/11~6/12の株価と出来高の差をまとめました。
銘柄 | 6/11終値(出来高) | 6/12終値(出来高) |
---|---|---|
キーウェアソリューションズ | 599 (7,100) |
699【ストップ高】 (449,300) |
電響社 | 647 (2,000) |
685 (25,000) |
大興電子通信 | 228 (41,000) |
245 (250,000) |
大成温調 | 550 (40,000) |
597 (139,000) |
第一商品 | 503 (16,500) |
492 (77,400) |
経年変化チェック、複数企業の比較が簡単にできるのが四季報の強み
この記事では会社四季報の読み方について紹介しました。
財務状況や業績は企業のWEBサイトなどでも確認できます。しかし銘柄を比較するときは、見比べないといけないので面倒ですよね。
四季報ならいろんな企業の経年変化を一度にチェックでき、他銘柄との比較の簡単です。
数値が半ページにまとまっており、分かりやすいというメリットもあります。
四季報を使えば、企業の収益性、財務の健全性、長期的な上昇トレンドにあるかの確認が可能です。
ランキングやコメントを参考に、四季報発売後に値上がりしそうな銘柄を探すのも醍醐味のひとつ。
四季報は多くの人が参考にしており、その内容によって株価に影響を与えることも少なくありません。会員なら四季報を無料で読むことができる証券会社もありますので、ぜひ活用してみましょう。